当世(零細)レコード屋事情

 デジタル配信に押されたのか、レコード業界は不況のようですが、中古レコード業界は空前の不況と言っていいんじゃないかと思います。それは私自身が毎日町やネットを歩いていて、中古CDショップがどんどん消えていくのを見てもわかります。かく言うStrangelove Recordsも創業以来の危機(?)で、普通ならここらで転職を考えたほうがいいような状況ですが、ここであきらめては女がすたる!というわけで、かえってムキになってCD集めに励んでおります。
 そこでどんな店がはやっているかを偵察するに、やっぱり「安い店」ですね。でも、はっきり言ってそういう店で置いているCDはどこにもあるようなクズばかり。はやってない店はよけいクズです。(ここでクズというのは音楽的にクズというわけではなくて、「大量に中古が出回っていてどこでも買える」という意味です)
 コレクターに「おお!」と言わせてくれるようなお宝を置いている店(あるいは少なくとも入荷の可能性のある店)は、もうeilのようなバカ高いところを除いて皆無に近くなってきています。だからよけい私は非力ながらも孤軍奮闘でがんばろうという気になっています。

 というわけで、最近仕入れもかなりシビアになっています。シビアというのは、お金がないのであまり高価なものや売れそうにないものは仕入れられないということと、そのぶん、徹底的に選別して仕入れるしかないということですが。そこで(今までも無意識にやっていたことですが)あらためて、店としての方針というか、ポリシーを明確にしようと思います。

  1. とにかく「よそにないもの」を置いておく。
     ご存じの通り、うちは日本盤CDが中心ですが、今では廃盤で、日本人でも「こんなの出てたの?」というCDや、東京の巨大中古CD店にもないようなものを選んで入れるようにしています。
  2. 専門性に徹する。
     というのもうちのポリシーです。いちおう専門であるインディー/オルタナや、看板アーティストの品揃えは損を覚悟でするつもりです。「多少高いけど、ここに行けばきっとある」と思ってもらえるような店にしたいと思ってます。(すでにMowaxや4ADはそうなってます)
  3. 流行を追わない。
     というのは、実は商売としては不利なんですが、私のこだわりです。
 ちょっと3については説明させてください。せっかく今(私の専門の)英国バンドがブレイク中なのに、新しいバンドのシングルやレア盤が少ないとご不満の方が(特に日本では)多いと思います。
 これにはちょっと事情がありまして、まず今が旬のバンドのレア盤はイギリスでもバカ高いということ。それを仕入れて売っても果たして日本で売れるかどうかちょっと心もとないのです。正直言って、私には値段ほどの価値があるとは思えない盤も多いですし。
 もうひとつの理由は利己的なもので、そういうのは今のところ全部自分のコレクション行きになってしまっているからです(笑)。しかし、そういうディスクはブームが去って値段が落ち着いたところで入れるつもりですし、自分のものも順次放出していくつもりですので、どうぞご辛抱を。
 人気が落ちてから売っても意味ないじゃないかと思われるかもしれませんが、実は今もうちの売れ線は「あの人は今?」的なバンドが多いんです。商売はシビアですから、人気が落ちたり解散したりすると、どこの店もさっさとバーゲンに出すか処分してしまいますが、そうなると、もうそのCDが聴きたくてもどこにも売っていません。そうなってからがうちの出番というわけで(笑)。これがほんとの隙間ビジネスですね。
 かつては当店の看板バンドであったMansunも残念ながら今ではすっかり忘れ去られて、ビジネス的に考えると、在庫は大幅に値段を下げて叩き売るのが常識ですし、実際他の店はそうしています。でも、うちには「解散後にMansunを知った」というお客様もけっこうおいでになるんです。そういう人がシングルもほしいと思っても、もううちでしか買えないというわけで、そういう方のお役に立てればと思っています。
 また、人気が落ちても(あるいはもともと人気がなくても)ぜひひとりでも多くの方に聴いてもらいたいと思うようなバンドは、売れる売れないに関係なく置くようにしています。
 よって、そういうCDは国内市価よりはやや割高になっていますが、そこはご勘弁ください。ある意味、「これだけ出しても欲しい」というお客様のためにキープしてあるようなものですので。
 たびたび「高い」と言って引き合いに出しているeilですが、ああいう商品をあれだけの規模で扱うには、あれぐらいの値段を付けなくてはやっていられないというのは自分がやっていてよくわかります。ですからeilのような店が存在するのはありがたいことだと思っているのですが、当店はあそこで買うほどお金がない(国内のお客様にとっては海外ショップなので利用しにくいという面もあります)お客様のためにあるようなものです。
 ここで値段についても弁解させてください。もともとこの店を始めたときは、単なる趣味で、まったく儲けようという魂胆はなかったので、値段は仕入れ価格に応じて付けていました。まあ、普通の商売ならそれがあたりまえですが、うちのようなマニア・ショップの場合、市価6000円のレア盤でも、仕入れが1200円だったから1800円で売るみたいなことをしてたんですね。それでどうなったかというと、当然ながらすべて入荷と同時に売れてしまう(笑)、のはいいんですが、欲しいという人からメールが殺到して、「こんなにたくさん買ってるのに、どうしてぼくに売ってくれないの!」とうらまれたりして(笑)。
 うちは「早い者勝ち」が原則ですが、大勢の人が同じ商品をほしがっていて、しかもそれが1枚しかない場合、やっぱり高い値段を付けた人に売るのが資本主義の原則で、お客様にもいちばん納得してもらえることに気付きました。そこでそういう商品はやむなく、少しずつ値段を上げざるを得ませんでした。Mowaxものなんかはすべて最初は2000円以下で売ってたのですが、やむなくじりじりと値段を上げてああなりました。
 それに本当に好きな人に買ってもらえるならいいんですが、業者に目を付けられて、うちで買ってeBayで高値で売りさばかれるのを見るのもいやだし、価値を知らないと思われてバカにされるのもいやだし、やはり今ではレア盤にはそれなりの値段を付けています。
 ただ問題は、日本の市場価値と海外の市場価値が必ずしも一致しないということですね。私なんかよくヤフオクの輸入レア盤を見て、「海外の倍もする!」とあきれていますが、うちの値段を見た日本人のお客様も同じ感想を抱くかもしれません。
 で、結局、どちらかに照準を合わせないとならないのですが、国内のお客様には本当に申しわけありませんが、今のところ、国内盤は海外市価をにらんで値付けをしています。というのも、第一にうちのお客様は海外の方が圧倒的に多いということ。また、今はインターネットで世界中から買い物ができますから、国内のお客様は海外ショップから安く買うことも可能だということ。ところが、輸入盤を扱う海外ショップは星の数ほどあるのに、日本盤を扱う良心的な値段の店はほとんどないんですね。
 というわけで、日本人が見ると高いと思われるでしょうが、これでも海外市価の80〜50%なんです。その代わりと言ってはなんですが、輸入レア盤も同じ基準で値段を付けています。しかも海外ショップの80〜50%ですから、これが日本のショップやオークションで売られるときはうちの2倍、3倍になるのは確実です。そのぶんで少しでも国内の方に還元したいと思っています。(実際、国内のお客様が買われるのもレアな日本盤が多いんですけどね) (ここで海外ショップと言うのは、eilみたいなバカ高いところではなくて、普通の良心的な店です。オークション価格はそれよりも安くなります)
 でも、これではまず儲かりませんね(笑)。元が取れないこともしょっちゅうです。海外発送はリスクも大きく、余分な経費がいろいろかかりますし、昔はそれでもドル高だったので、円ドル差益でなんとかカバーしていたのですが、それもできなくなってしまいました。それもあって、値段はじわじわ上がってます。
 とりあえず、この商売で儲けようという野望はとっくにあきらめましたが(笑)、せめてつぶれない程度にやって行きたいというわけで、ぎりぎりの値付けをしています。また、お買い上げのお客様には大サービスしてますので、何はともあれご注文をお待ちしてます。
 なお、音楽ファンの相互援助(笑)がモットーの当店としては、商品の拡充にぜひお客様のお力添えをいただきたいと思っています。そのため、このような買い取り希望リストを作ってみました。まだまだ不備なもので、実際は他にも欲しい商品はたくさんあるのですが、参考までに。
 こういう品物やお客を選ぶ「ぜいたく」はプロならば許されないことですが、そこは素人の強み、もともとが金儲けのための商売ではありませんし(それでもせめて黒字になってほしいとは思いますが)、たったひとりでも喜んでくれる方がいるまで続けるつもりでおります。
 ひとりでやってる超零細ショップ、限られた資力と、ハンデはいろいろありますが、私なりにがんばりますので、どうぞ皆さまのご支援をお願いします。
店主
これに関係した商売の裏話については、こちらの「ひとりごと日記」(9月7日付け)にも書いてます。けっこう笑える話なのでよかったら読んでください。
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